短編小説『ロシアンルーレット』  最終話

「なんなんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」




再び叫んだクルル・・返事は当然返ってこない・・・はずだった







「ほんと・・なんなんだろうね」






それは聞き覚えのある声だった、2人が何度も聞いてきた絶望の声・・・・



「ロメオは死んだよ・・あいつも無駄死にだなぁ」



「なんで・・・なんで・・」



ぐっと歯をくいしばるクルル、その目から涙は消えていた。
耐えられない悲しみ、耐えられない憎しみ、怒り、すべてがクルルの心の中で爆発しそうなほど膨れ上がり、今にも破裂しそうだった。



「さぁて、、それじゃあロシアンルーレットを再開し「黙れ!!!」



ミラの声をさえぎる声・・怒りが爆発した・・・


声を上げ銃をミラに向けたのは他でもないメガロだ。



「ここで・・殺す」



臆病なメガロが発したとは思えない口調、怒りの中にどこか冷静さと殺意を兼ね備えているように感じさせられる。



「メガロ・・・お前には撃てない・・」



そう言いながら自分の銃を取り出そうとするミラ



「動くな!少しでも動けば撃つ!」




「ふ・・・16発中3発撃って2発の当たり・・お前が撃ってもハズレに決まってるだろう」


とミラ




「じゃあロシアンルーレット再開するか・・ミラには死なない自信があるみたいだしな」



自分が死ぬかもしれない状況・・額から汗を流すミラ、しかし表情は不気味なほどにニヤニヤし、その表情からはまるで自分は死なないことが分かっているかのような表情にも思えた。



「いくぞ・・最後は自分の始めたこのロシアンルーレットに殺されるんだな!!」




ミラの心臓あたりに銃を向けて引き金に手をかけるメガロ・・


そして引き金を引く・・








「ズドン」







確かに音が鳴った・・クルルが感じた・・・これは・・当たり?



一瞬止まっていた時間が再び動き出す・・




「ドサッ」




その場に倒れたのは・・・





ミラ





腹部から血を流し倒れるミラ・・



「はぁ・・はぁ・・」



ひょこんと座り込むメガロ、駆け寄るクルル、彼等二人は生き残ることが








「ズドン」




「!?」




「え・・・」



メガロの額に打ち込まれる弾丸・・生き残ったことに安堵はとても短く、切なく終わってしまった



メガロの死と言う形で。





「クククハハハハハハ・・生き残ったことを安堵している人間を殺すのがこんなにも快感だとはなぁ!!」




笑い声をあげ、血をだらだらと流しながら立ち上がるミラ。




「な・・ん・・で・・・なんで生きてんだよ・・」




とっさにそばに落ちているメガロの手から銃を拾い、そして構えるクルル・・




「ククク・・このまま殺しても面白くないなぁ・・1発だけ撃つことを許可してやるよ、ククククク」






(みんなを信じろ・・)祈るように目をつぶって・・そして引き金に手をかける・・



「みんな・・みんな命をかけてここまできたんだ、、たとえ本当に望んだことじゃなくても・・


犠牲になって、このゲームの危険を教えてくれた ニカ


命がけで助けを呼ぼうとしてくれた クラム


死を覚悟してお前を倒そうとしたアッシュ、ロメオ


そしてミラを討つ為に立ち上がった メガロ



みんながいたから俺はここにいる・・みんながいたからおれは・・おれは・・・生きれたんだよぉぉぉぉぉぉ!!!!」














「ドン」











銃声・・・ミラは絶対に弾は出ないと踏んだのだろう・・


しかし奇跡はおこった・・



ミラの頭部を打ち抜き、地面に倒れるミラ・・これで・・終わった。




みんなは・・生きてないんだよな・・
もう・・一緒に話せない、一緒に遊べない、一緒に笑えない・・・

自然と涙がこぼれ落ちる。




「あれ・・もう涙は枯れたはずなのにな・・」




「それにしてもこんだけ銃声がしてるのに警察どころか人も1人もこないなんてな・・」




そのときクルルは体に異変を感じた・・なんだかうまく歩けないし体はふらふらする・・おなかもなんか変な感じだ。
疲れかな?そうおもっておなかをさする・・でもおなかにあったのは・・・・違和感の原因・・



「???」



おなかから手を戻すと・・そこには真っ赤な鮮血が・・


「おれは・・撃たr・・・?」


「ドサッ」



地面に倒れたクルルの両目には信じられないものが映った・・
頭を確かに打ち抜かれたミラが銃を持ちながら笑っているのだ・・

クルルは死ぬ間際に疑問を抱かされた・・なんでミラは死んでいないのか?



(なんで・・ミラ?・・が生きてる・・??え・・?確かに階段から落ちてもロメオしか死ななかったし、メガロが確かに心臓を撃ちぬいたけど死ななかった、それにまるで自分は死なないことが分かっているかのような振る舞い、おまけに警察や人すら来ない、すべてがミラの思い通りのような・・?・・ミラの思い通りの世界・・?まさか!!!ここは・・・)



クルルの思考は息と共に薄れてゆき・・やがて・・停止した。


クルルの死体を見ながらニヤニヤ笑っているミラ。




「おやすみクルル・・次は本番で会おうね・・」




ゆっくりとその世界は暗くなり・・そして・・閉じた・・









「どうしたんだクルル? さっきからず〜っとうつむいたまんまだぞ?」



(え?)
ふいにかけられたその声にびっくりして顔を上げるクルル




「どしたんだべ?ずっと下向いてるからめっちゃ気になってたべ」



はっとわれに返るクルル、こっちを心配そうに見つめていたのはクラムとアッシュ、前を見るとロメオとニカが楽しそうに話している、後ろにはメガロと・・そしてミラの姿もあった・・・



「は〜肩軽いな〜思ってたけどメガロが俺のバックもってくれてたのか」


「え・・あ・うん」


クルルの一言にメガロが反応する。


「やっぱ自分で持つわ」


そういうと、メガロの手からバックを取ると、肩に担いだ。


「な、、なんで急に?」


メガロが目を丸くして聞いてくる・・


「う〜ん・・なんでだろ・・なんかこうしなきゃいけない気がしたんだ・・」


そういって空を見上げるクルル・・



「さて・・・リハーサルは終わったかな・・」


「ん?なんか言ったベ?ミラ」


「いや・・特に何も・・」


ふ〜んと言って首をかしげるアッシュ



「今日は何してあそぶ〜?」



ぶらぶらと歩きながらクラムは言い放った。



「やっぱいつもの公園じゃない?」



アッシュとクルルが同時に同じ事を言い、お互い顔を見詰め合って笑っている。



しばらく歩き続け、公園の目の前の長ーい長ーい階段を登ると、7人の目に入ってきたのは、いつもの公園。









ロシアンルーレットって知ってる?」



〜END〜