短編小説『ロシアンルーレット』 1話
月明かりが照らす公園に少年達は集まっていた。
6人いる少年のほとんどの額には汗が流れ、緊張と恐怖が混じったかのような表情をしている。
・・・ただ一人を除いては・・・
微笑を浮かべる少年の手には、拳銃が握られていた。
彼の名は「ミラ」髪型はセミロングで綺麗な銀色の髪に、赤色の目をしている。
「さぁ 早く撃ちなよロメオ」
優しい口調に似合わないそのセリフをミラはさらっと言い放つ。
ミラから拳銃を渡されたロメオの表情はより一層こわばり、汗がだらだらと流れ落ちている。
ロメオは集まった七人の中で一番背が低く、読書が好きなごく普通の少年である。
ロメオはもちろんのことミラを除く6人は全員この状況に絶望していた・・
突然のこの状況に・・
ーーーそれはさかのぼること1時間前ーーー
昼過ぎの商店街を7人の少年はただ目的も無く歩いていた。
「今日は何してあそぶ〜?」
ぶらぶらと歩きながら「クラム」は言い放った。
明るく、遊ぶのが大好きで、誰でも分け隔てなく接するクラムは7人の中でも中心的な存在だった。
クラムを筆頭に
常に冷静沈着で、機械いじりが好きな「ニカ」
バカ元気で、ちょっとおバカな「アッシュ」
お調子者で、流されやすい「クルル」
根暗で、よくパシリになる「メガロ」
そしてロメオに、ミラ
この7人はいつも決まって一緒に行動している。
「やっぱいつもの公園じゃない?」
アッシュとクルルが同時に同じ事を言い、お互い顔を見詰め合って笑っている。
しばらく歩き続け、公園の目の前の長ーい長ーい階段を登ると、7人の目に入ってきたのは、いつもの公園・・いつもの風景・・・しかしそこで始まることは、いつもとは違っていた・・
「ロシアンルーレットって知ってる?」
「え?」
ふいに発せられたミラの一言にみんなが振り返った。
「知ってるけど・・やんの?」
と、クルル
「度胸試しみたいな?楽しそうだしやってみようべ」
アッシュの一言により、みんなはロシアンルーレットをする雰囲気になっていた・・
そしてミラがルール説明を始めた・・・
「弾は16発中6発・・そして・・ 本来ならロシアンルーレットは自分の頭に撃つけど、今からのは好きな相手1人を選んで頭に撃つ・・・ってのはどう?」
「え?・・・まぁ・・とりあえずやるべ!」
アッシュが早くやりたいのかミラをせかす、そして始まってしまったのだ・・
・・・悪夢が・・・
アッシュはミラが懐から取り出した拳銃を、ニカの頭につきつける。
「な・・ボクに撃つのか・・ちょっと怖いんだけど」
と汗をたらす。
「今日テストの点を馬鹿にしたからな!仕返しだべ!」
「あはは」
と周囲の笑い声の中その音は鳴り響いた・・・
「ドン」
まるで悲劇の引き金が引かれたかのように・・
「・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・え?」
フラリと地面にうつ伏せで倒れるニカ・・頭から流れる真っ赤な血を見た全員の口は開いたままだった。
「ニカも運がなかったなぁ〜」
ミラが発したあまりにも能天気な声、場違いすぎるその声は、不気味で、そして不快だった。
「おいどういうことだよ!なんでニカが・・こんな・・こんなことに」
ロメオが怒りと恐怖とがぐちゃぐちゃになった表情でミラやみんなを見回す。
「さぁて次は・・・ロメオの番かな」
「はぁ!ミラ おまえどうしたんだよ!ニカがこんなになってるってのに!」
「きゅ・・救急車よばないと」
やっとのことで冷静さを取り戻したクルルとクラムがポケットから携帯電話を取り出そうとする。しかし。
「もう死んでるよ」
ミラの冷たい一言が、再び沈黙を呼び寄せた・・・
続けて
「僕はこの日のために君らと仲良くしてきたんだ・・僕は人間が大好きでね・・中でも恐怖におびえる表情や醜い本性を晒す時が大好きなんだよ」
ミラ以外の5人の恐怖は、、少しづつ憎悪へと変わっていった・・
「ミラ・・いかれてやがる・・アッシュ!その拳銃をミラに向けろっ!」
クルルの呼びかけに応じたアッシュは銃口を素早くミラの体に向ける。
少しでも動いたら撃つぞといわんばかりの表情でミラに近づいたアッシュは徐々に距離をつめていき、アッシュとミラとの距離は30センチほどとなった。
「こいつを警察に突き出そうべ!」
アッシュの力強い口調と同時に
「そんなことしたら君も捕まるよ・・」
とミラが即座に返す。
「な!何言ってんだべ!おまえがニカを殺したんだべ!」
「僕は君に銃を渡しただけだ・・撃ったのはおまえじゃないか」
「実弾だって知ってたらこんなことするはずないべ!」
「ふぅん・・・まぁそれは出来ないけどね」
アッシュがああいえばミラはああ返す・・そのやり取りの末
「早く続きをしない?次はロメオの番だよ」
とミラ・・・
「うつわけないだろ!!」
と、ロメオ
「しょうがないな・・いいことを教えてあげよう、この公園には爆弾が仕掛けてあって、僕が死ぬと爆発する仕組みになっている」
「な・・でもそれがどうしたんだよ・・」
「誰かがロシアンルーレットを抜けようとすればすぐ爆発させる・・」
「なぁ!!」
ロメオ、クラム、アッシュの声が重なった、メガロは恐怖で地面に足をついた。
「さぁて銃を返してくれアッシュ」
「・・・・」
「・・・死にたいらしいね」
「分かった!返すべ!!」
アッシュは向けていた銃をおろしそのままミラに渡し、後ろに下がる。
重苦しい空気の中、二回目が始まろうとして、今に至るのだ・・
銃を手渡されたロメオは銃を誰にも向けれず、震えていた。
「十秒以内に銃口を向けなければお前を殺す」
ミラの冷徹な一言がロメオの背中を刺す・・そしてロメオは静かに銃口を向けた・・
アッシュの頭に・・
「ロメオ!!何で俺に向けるんだべ!!」
「アッシュ・・許してくれ・・引き金を引いた責任を取って一発だけ撃たせてくれ・・」
「い・・いやだべ・・いやだいやだいやだぁぁぁ!!」
引き金に手をかけるロメオ・・・がむしゃらに「いやだ」を繰り返すアッシュ・・・
そして・・・
「カチャ」
静かな公園では引き金を引いた音ですらあたりに響き渡る。
「はぁ・・・はぁ・・」
アッシュとロメオの息遣いが徐々に落ち着いていく、
「ハズレかぁ・・次は・・・・メガロで・・」
その瞬間あたりがざわついた・・・パシリとして使われているメガロ銃を撃つということは、自分は恨まれているから銃口を向けられるかもしれないという恐怖が全員に生まれたのだ。
そして銃はロメオの手からメガロの手に渡される。
(誰か銃声を聞いて助けに来てくれないかな・・・それとも・・)
心の中でここから無事逃げ出す方法を必死に考えるクルル、唯一実行できることといえばミラの目を盗んで携帯で警察に電話すること・・しかしそれは余りにも危険だと本人も十分に分かっていた、しかしこの状況はそんなものと比べ物にならないくらいはるかに危険な状態だと分かっていたのだろう、
クルルはそっと背中に手を回し携帯を開いた。
(ここからが重要だ・・ボタンの配置を頭で思い浮かべないと・・)
その時・・・不運にもメガロの銃口はクルルに向けられた・・・
「・・・え?・・え!!」
驚くクルルは額からこれでも課というぐらいの汗をたらす・・・携帯を使っていることをばれてはいけない恐怖と、銃口を向けられた恐怖で気が動転してしまいそうだった・・
だが・・メガロはそのまま銃口を動かすと・・・
銃口が向いた先は・・・地面だった・・・
「ぼ・・ぼくには・・こんなこと出来ないよ・・みんな友達だし・・」
その時鳴り響いた2度目の悪夢・・
「ドン」
【・・・続く】