短編小説『ロシアンルーレット』 2話
その時鳴り響いた2度目の悪夢・・
「ドン」
そしてミラが静かに言葉を発する。
「携帯を隠し持っていた罰だ、死んでもらう」
銃声の鳴り響いた瞬間目をつぶっていたクルルは(ああ、俺は死んだのか)と、まるで死刑の執行を待つ死刑囚のような気持ちで、自分の死を確認しようとゆっくりと目を開ける。
「ドン」
そして一人の少年が崩れ落ちた・・・
隠し持っていた携帯がするりと手から抜け、地面に落ちる
「しにたく・・・な・・・・い」
膝を地面につきゆっくりと崩れていくその姿に最早生気は無かった。
携帯を隠し持っていたことがバレ、死亡したのは・・・
クラムだった
クルルははっとした、自分の体の感覚は確かにある、確かに生きている、自分と同じことを考えていたクラムが殺されたんだということが分かった。
そして生きていたことに対する安堵は、やがてクルムが携帯をいじっていたことによって殺されたという恐怖に変わる。
クルルは携帯をそっとポケットにしまおうとする、ゆっくりと、すこしの音もたてないように・・・
「ク・・・クラム君!!」
「なんでこんなことすんだべ!!も・もうこんなバカなことやめようべ!な?」
「バカは君だよアッシュ、僕がこんなことをしている理由はさっき話したはずだ・・・楽しいからしてるってね」
「こんなこと・・こんなことしてもなぁ・・何も楽しくないんだよ!!」
怒りでアッシュの口調が変わる、そして一直線にミラの元に走り出すアッシュ。
「お前にとって楽しくてもなぁ、こっちとってはこれっぽっちも楽しくねぇんだよ!お前に友達を何人も殺されて、黙って見てられるかよ!!!」
「ドンッ ズドンッ」
アッシュの胸に打ち込まれる2発の弾丸
それでもアッシュは足を止めずミラの胸倉をつかみ銃を拳で弾き飛ばす。
「もう俺は助かんねぇんだろうな・・・でも不思議と痛みは感じねぇ・・・恐怖
も感じねぇ・・・お前への怒りで頭ん中一杯で、他の気持ちは入ってこねぇんだよ!!!」
ミラの首を締めるアッシュ・・
「ぐ、やめろっここを爆破するぞ!お前の大切な友達はどうなってもいいのか?」
アッシュの腕の中で必死に抵抗するミラ。
しかし・・・ミラの首からするりと手が離れ、アッシュは地面に膝をつく・・
「ちくしょうが・・・」
心から搾り出されたような声、最後の言葉。
「はぁ、、はぁ、ば、、馬鹿が・・・無駄死にだな・」
アッシュを見ながらミラがそう言ったと同時に今度はロメオがミラに襲い掛かる。
「俺は最初恐怖からアッシュに銃口を向けちまった・・そんな俺を・・俺達を命がけで助けようとしてたやつを・・俺は・・俺は」
ロメオは涙交じりでそういいいながらミラをがしっとつかみ後ろへ通していく・・
「今度はお前かロメオォ・・こんなことしなければ少しは長生きできたかもしれないのになぁ」
すぐ後ろにはこの公園に来るときに登ってきた長い階段、それを血眼で見つめるミラと目をつぶっているロメオ。
ふわりと宙に浮くロメオとミラ、それは誰から見ても、長い階段という【死】に向かっているようにしか見えなかった。
そして2人はクルルとメガロの視界から一瞬で消えていった。
その場で膝をつくメガロ、立ち尽くすクルル
「・・・なんなんだよ」
「え?」
クルルが口を開く。
「これって・・これって・・・一体何なんだよぉぉぉぉおおおおおお」
響き渡った・・・でも答えは返ってこない・・目の前に倒れているニカ、クラム、アッシュ、そして消えていったロメオ・・・そしてミラ。クルルの頭の中は悔しさとやりきれない気持ちで一杯になった。
「なんなんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!」
再び叫んだクルル・・返事は当然返ってこない・・・はずだった
「ほんと・・なんなんだろうね」
それは聞き覚えのある声だった、2人が何度も聞いてきた絶望の声・・・・
【・・・続く】